みなさまこんにちは。
今回の話題は、クロロプレンウェーダーやソックスウェーダーのソックス部に使用されているクロロプレン素材に水漏れが発生した場合の修理方法と、修理に必要な材料についての記事です。
ウェーダー修理というと、専用のグルー(接着剤)で蓋をしたらいいだけじゃないかとお考えの方も多いかと思いますが、クロロプレン素材については非常に重要な注意事項がありますので、その辺りも合わせて解説したいと思います。
そもそもクロロプレン素材とは
「クロロプレン素材」とか「クロロプレンウェーダー」と言うよりも、「ネオプレン素材」とか「ネオプレウェーダー」と言う呼称の方が有名かもしれませんが、そもそも「ネオプレン」は、アメリカのデュポン社の登録商標名です。
1930年にデュポン社で開発され、翌31年から製造が始められたというこの製品ですが、デュポン社のHPでは以下のように記されています。
ネオプレン®クロロプレンゴムは非常に多様性を持った合成ゴムで、広い温度域で、耐紫外線性、耐炭化水素性、耐薬品性を提供します。
(デュポン社HPより引用)
クロロプレンゴムは上記特性に加えて、伸縮性があり接着や縫製も可能、さらに安価ということもあり、電線皮膜やOリング、ベルトコンベアのベルトやウェットスーツ、医療現場、ノートPCやタブレットケースのクッション材や靴、服に至るまで、産業用から日常雑貨まで幅広く使用されていますね。
なお、先述の通り「ネオプレン」は商標名なので、本記事では「クロロプレン」という表記を用います。
クロロプレンウェーダーの修理方法(解説編)
比較的耐久性、耐摩耗性も高いクロロプレン素材ですが、使用しているうちにいつの間にか穴が空いてしまうことがあります。
ウェーダーだと、当然そこから水漏れが始まりますが、下図の通り、クロロプレン素材は通常、ニット素材の層にサンドイッチされた状態になっているため、水漏れかな?と思っても、容易に穴の位置を特定しにくいです。
このようなクロロプレン素材の穴あき修理の際、よくやってしまいがちな失敗が、水漏れ箇所を直接ボンドなどで塞いでしまおうと試みること。
一見このアイデアはうまくいきそうに思えますが、大抵の場合では、下図の通りボンドは穴を塞ぎきれないため、ニット層を通じて、毛細管現象により水が周囲に染み出してしまうことになります。
これが、クロロプレン素材の修理がうまくいかない大きな要因なのです。
ではどのようにすれば、水の染み出さない完璧な修理ができるのでしょう?
ここで重要なのは、まず水漏れ箇所を正確に、ピンポイントで特定すること。
そして次に、特定した水漏れ箇所(穴)の周囲のニット層を、下図のように完全に除去してやることです。
ニットを完全に除去した上で、ボンドを穴とその周囲にしっかり塗布することで、空いた穴に完全に蓋をしてやることが可能になります。
この修理が具体的にどのような作業工程になるか、次のセクションでみていきましょう。
クロロプレンウェーダーの修理方法(実践編)
ここでご紹介するは、私が2017年から愛用しているソックスウェーダーの修理の様子。
いつ穴が空いたのか全くわかりませんが、使用しているうちに右足ソックス部分に軽い湿り気を感じるようになってきましたので、DIY修理にトライです。
まず、穴の位置を正確に特定するために、ウェーダー内部に水を入れて(ソックスウェーダーなら、完全に裏返した状態にして、防水面に水を入れてあげる方がその後の乾燥作業をやりやすいでしょう)、注意深く滲み出る水を目視確認します。
この時、おおよその穴の位置が分かっていれば確認しやすいですが、わかっていない場合は、ティッシュなどを当ててやると、水が漏れている箇所を見つけやすいです。
今回の例では、水漏れ箇所がシームテープ面の下でしたが、このような場合は、必ずその部分のシームテープを剥がしてやった上で、ニット層を取り除いてやることが重要です。
水が染み出す箇所をピンポイントで特定することが修理の要。 |
シームテープは、熱を加えると接着成分が溶けて剥がしやすくなるので、アイロンを使って作業します。この時、かならず当て布などをして直接生地を溶かしたりしないよう気をつけてください。
スチーム機能は不要なので、できるだけ小型で作業性の良いアイロンがあると便利ですね。
水漏れ箇所をピンポイントで特定できたら、次はその部分の周囲のニット素材を先の鋭いハサミでカットしていきます。
完全にニットを取り除き、クロロプレンゴム表面が露出するようにします。 |
この時、クロロプレン生地自体もカットしてしまうことがありますが、多少ならそれで構いません。ニットの繊維をできるだけ残さない方が良いです。
ニット繊維を取り除いた部分に、接着剤を流し込みます。
ウェーダー補修用のグルー(接着剤)は、開封後に常温保存できない製品が多く経済的ではありませんが、このリトルプレゼンツ
のグルーは常温保管可能品。 |
この時に使用する接着剤は、ウェーダー修理用、あるいはセメダイン スーパーXのような一般家庭用のものでも良いのですが、完璧な修理を目指す場合に是非とも使用したいのが、ヘンケルジャパンのLOCTITE黒ゴム接着剤という製品。
これがウェーダー修理に最適なロックタイトの黒ゴム接着剤。仕上がりはゴムそのものになるため、ウェーダーだけでなく、長靴や普通の靴底などの修理などにも適しています。 |
なぜこの接着剤が良いかというと、主原料がクロロプレンゴム、つまり、ウェーダーに使用されている素材と同じ物で、かつ溶剤が入った製品であるため、乾燥時に完全に下地のクロロプレンと同化して、水漏れや後々の剥がれを起こさない強固な防水が可能となるためです。
この製品の詳細なインプレは以下記事もご参照ください。
これを何回かに分け、間隔を数時間開けて、肉盛りするように重ねて塗布します。
乾燥すると体積が若干減るので、溢れる寸前くらいまで山盛りにしてOKです。 |
ここまでできればほぼ修理は完成ですが、修理部分の足へのあたりを穏やかにし、耐摩耗性と滑りを出すために、黒ゴム接着剤を塗布、乾燥させた箇所の上から、最後にクロロプレン修理専用のパッチを当てます。
この時オススメなのが、リトルプレゼンツから出ているCRリペアパッチセットAC-82という製品。
写真はAC-83というセット商品ですが、この右側に見えるテープ状のものがAC-84
CRリペアパッチセットです。 |
これはクロロプレン素材に使えるシームテープですが、アイロンの熱で簡単強力に接着できるため、仕上げ用に最適です。
修理箇所を十分覆える程度のサイズにカットします。 |
このパッチを当てて熱処理してやると出来上がりです。
アイロンの熱で接着剤を溶かして接着します。 |
アイロンを使う際は、必ず当て布を忘れずに。 |
パッチによって修理箇所を完全に密封します。 |
ここまでやれば、完璧なのですが、念には念を入れて、裏面からも同じように修理してあげましょう。
ウェーダーを裏返して、反対面も同様にニットをハサミでカットします。 |
黒ゴム接着剤を塗布して乾燥させます。 |
仕上げにCRリペアパッチを接着して完成。 |
ここまでやれば、穴の位置を大きく外していない限り、まず水漏れが再発することはありません。
まとめ
今回は、ウェーダーに使われているネオプレン素材を修理する方法をご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?
ウェーダーは比較的高価なものなので、少々の穴あきであれば修理してできれば長く使いたいところですが、メーカーに修理依頼した場合、ちょっとしたピンホールでも結構な出費になり、また所用日数も非常に長くなる場合が多いのが悩みの種ですよね。
しかし、今回ご紹介した手順で修理を行えば、出費は接着剤やパッチ代を入れても実質千数百円程度、期間は乾燥期間も含めて仕上がりまで数日間で、ほとんどの穴あきケースにおいて、プロ顔負けの完璧な修理が可能です。
今回修理に使用した道具たち。これにプラスして、アイロン、当て布などが必要ですね。 |
ただし、防水透湿素材とソックスの接合部や、クロロプレンとPVCブーツの接合部など、各メーカーが独自の圧着をしていたり、工業用ミシンで縫製されていたりする「接合部」からの水漏れは、個人での修理は非常に難しいので、メーカーに依頼して修理することをオススメします。
多少の手間はかかりますが、自分で修理したウェーダーで再び快適に釣りをできるのは素晴らしいことだと思います。
見た目も悪くないですし、仕上げに使ったリペアパッチのおかげで、足に直接触れる部分にも違和感を感じません。この後何度か実釣でウェーディングしましたが、完璧に漏水はありませんでした。 |
みなさんも諦めてしまう前に、是非一度自前修理にトライしてみてください。
なお、この記事ではクロロプレン素材部分に関する補修方法を説明していますが、一般的な防水透湿素材の場合はもっと簡単に修理することができます。
以下の記事でその方法を書いていますので、よろしければご覧になってみてください。
なお、この記事でご紹介したアイテムはこちらです。
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