私がウェーディングの釣りを初めてからすでに10年以上が経過しました。
それまで、おかっぱりオンリーで釣りをしてきましたが、ウェーダーを買うことで、狙えるポイントの幅が広がり、釣果が増えたことは言うまでもありません。
その10年以上の間、ウェーディングしてきたのはほぼいつもの浜、サーフオンリーですが、いろいろなメーカーのいろいろなタイプのウェーダーを、合計10種類以上履いてきました。
ウェーディングでメインで使っているウェーダーは以下と、最近、シマノのドライシールド・ストレッチウェーダーを新調したばかり。
特に、リアス製のウェーダーとシマノ製のウェーダーは値段が高い分、つくりも耐久性も非常によく、とても気に入っていますが、消耗品と言われるウェーダー、いざ買おうと思うと結構高額なので、なかなか気軽に買い替える気にはなれませんよね。
今回はウェーダーとお金の話。 |
そこで、今回は、ウェーディングの釣りをするための必須コストとも言える、ウェーダーの寿命と値段の関係についてのまとめ記事を書いてみたいと思います。
そもそもウエーダーの寿命とは?
以前、以下の記事でも書きましたが、防水透湿ウェーダーに関して言えば、海外製品含めて今の主流はポリウレタン系防水透湿素材のもの。
しかし、このポリウレタン(PU)系防水透湿素材には、宿命ともいうべき「加水分解する」という特性が備わっています。
ん?防水素材なのに加水分解?と不思議に思われる方もいらっしゃると思いますが、水分子のHが、PU樹脂と化学反応し、次第にPU樹脂が分解されていくのです。
これが加水分解のなれの果て。 |
上の写真は、購入から10年以上経過した、ノースフェイス独自の防水透湿素材「HyVent」を採用したレインウェアですが、ポリウレタン加工された防水透湿膜が襟周りから分解してボロボロになり剥離しているのが見えるでしょうか?
この状態では全くレインウェアとして役に立たないと言えるでしょう。
ちなみに、コレより早い時期に購入した同ブランドのゴアテックスXCR素材のレインウェアは、購入後15年以上経過した現在でも問題なく防水性を保っています。
それは、価格差も要因の一つですが、そもそも防水透湿の仕組みが異なること、また、メンブレンの組成の違いからくる性能差です。
フェイクレザーのジャケットが数年の使用でべとついてきたり、スポーツシューズの靴底がポロリと剥がれてしまう現象も、この加水分解が原因です(靴底自体がPU製でなくても、接着成分がPUの場合には起きます)。
商品説明などにはあまり書かれているのを見たことがありませんが、つまりは世の中の防水透湿素材のほとんどは、上記理由から寿命があるのです。
まあ、長いか短いかの違いだけで全てのものに寿命はありますが。
ただ、この寿命の長さは、使用条件により大きく異なるため、予測するのは非常に困難です。
一般的にポリウレタン製ファブリックだと、5年程度で加水分解が始まるとも言われていますが、ウェーダーの場合はどうなのでしょうか。
以下では、実際に私自身がこれまでウェーダーについて、その寿命データを見ていきたいと思います。
各社ウェーダーの実績寿命データ
過去に購入、使用したウェーダーのうち、使用頻度が高くメインのウェーダーとして使用していたものだけについて、その寿命の大まかに平均を出してみると、たいていの商品は週1回の使用で、普通に使っていて大抵2年半ほどで、水漏れによる寿命を迎えていますね。
データを並べると以下の通りです。
①パズデザイン ブレスシェード ソックスウェーダー(1着目)・・・約2年
ソックス接合部、シームテープ周辺を中心に複数箇所から水漏れ、メンブレン剥離により引退
②パズデザイン ブレスシェード ソックスウェーダー(2着目)・・・約2年5ヶ月
ソックス接合部、シームテープ周辺を中心に複数箇所から水漏れにより引退
水漏れ箇所のマーキング跡と、幾度にもわたる手術痕が見て取れます(笑) |
③パズデザイン ゴアテックス ソックスウェーダー・・・約5年以上
ソックス接合部、シームテープ周辺の水漏れにより引退
ゴアテックスはさすがに素材は全く問題なしでしたが、それでもシーム部分はやはりウィークポイントでした。 |
裏返して水を入れると、ソックス接合部付近からチョロチョロ水漏れ・・・ |
④PROX ブリザテック ブーツフィットウェーダー・・・約1年
ブーツ接合部、シームテープ他本体複数箇所から水漏れにより引退 (短命のため遺影なしw)
⑤シマノ ドライシールド ソックスウェーダー・・・(現役)
2年目にソックス水漏れによりメーカーにてソックス交換後、3年目に再度ソックスにピンホールにて水漏れ発生、自力修理にて解消したため現役復帰。本体素材は水漏れなし。
ストッキングタイプの強みは完全裏返しができるため、個人でも容易に修復ができるところ。 |
今回の水漏れ原因となったストッキング先端部。先日時間をかけて修理したので、完璧な補修ができました。 |
⑥シマノ ドライシールド サーフウェーダー・・・約2年6ヶ月
シューズ一体型ソックスの内部で水漏れ発生のため引退予定。
独自のシューズ一体型タイプで、運動性、走破性は他の追随を許さないほど高いウェーダーでしたが、その売りとも言えるシューズ部分で修復困難な水漏れ発生。 |
⑦リバレイRBB シュープリームサーフウェーダー・・・約2年10ヶ月
左右両足とも広範囲にわたる水漏れ発生のため引退。
漏水箇所を特定できるようなピンホールではなく、面で幅広く濡れるようになったので、防水透湿素材の劣化による水漏れだと推測されます。
立体裁断でなかなか使いやすいウェーダーでしたが、寿命はそこまで持ちませんでした。 |
寿命データの考察
①パズデザインのブレスシェード製ソックスウェーダーは、自身で初めて購入したウェーダーということで、まだ防水透湿素材の特性やお手入れ方法などにあまり知識がなかったこともあり、使用後に適切な水洗いをしていない、直射日光に当たる状態で保管する、湿度の多い環境に保管するなど、知識不足によって必要以上にウェーダーの寿命を縮めてしまっていたと考えられます。
②は①と全く同一製品をリピート買いしましたが、使用後の水洗いや乾燥などの多少お手入れの必要性を理解するようになったため、①に比べて寿命が延伸されていますね。
③パズデザインのゴアテックスソックスウェーダーは、唯一ポリウレタン系素材ではないウェーダーで、非常に長期間防水透湿性能を維持してくれていましたが、いくら素材が優れていても、やはり縫合、接着の関係する部位や摩耗の激しいソックスに関してはウィークポイントとなりうるようで、これらの複数箇所から水漏れしてしまい、廃棄を余儀なくされました。
④PROXのブリザテック製ウェーダーは、店頭販売価格が安かったのでお試しで買ってみたウェーダーで、見た目も使用感もどことなくペラペラで薄いイメージがありましたが、予想通り最も短命に終わってしまいました。
使用開始からちょうど一年くらい経過したころに、モグラたたきのようにアチコチから同時多発的に水漏れして、修理を諦めたものです。
⑤シマノのドライシールド製ソックスウェーダーは、なんらかの理由でピンホールが空いてしまったソックス部を除き、防水透湿素材やシームテープにはなんら問題は発生していませんが、同時期に使用していた別のウェーダー(⑥)の使用頻度が高まるにつれて使用頻度が下がったため、その分長寿命になっているだけかもしれません。
⑥シマノのドライシールド サーフウェーダーは、使用頻度も高く、連続使用などもしており、そのせいか見た目の上でも明らかなメンブレン剥離などが生じて生地もふにゃふにゃ、いつ水漏れしてもおかしく無い感じでしたが、予想に反して本体部分からの水漏れは一切起きず、作り付けのシューズ部分から、両足同時期に漏水しました。
防水透湿素材そのものの寿命より先に、シューズ部分が寿命を迎えてしまったようです。
作り付けのブーツは非常に歩行性能が高く履き心地もよかったですが、この部分の漏水はさすがにリペアは困難ですね。
⑦RBBのシュープリームサーフウェーダーは、初めてのリバレイ製品ということでそこそこ期待していましたが、やはりコレも使用2年目以降なんだか怪しい感じになってきて、3年目の夏には明らかに水が入ってきている感覚になり、引退させました。
このウェーダーは、立体裁断で比較的しゃがんだり膝を曲げた姿勢が取りやすかったこともあり、ウェーディング兼オカッパリの釣りで、しゃがんだ姿勢で使うことも多かったため、おそらくはメンブレンに過剰な引っ張り力が掛かっていたのだと思います。
水漏れの出方は結構④のPROXの最期と似た感じでしたね。
と、各ウェーダーが引退するまでの経緯はこんな感じですが、これらのウェーダーについて、使用期間=寿命を見た場合、水漏れトラブルが発生するまで製品によって長い、短いの違いがあるようですが、おおよその実使用回数と、ウェーダーの購入金額(定価ではありません)の関係を見てみると、何らかの相関関係が見えてくるかもしれません。
ということで、その関係を下表に整理してみました。
# | 使用回数 | 購入価格 | 釣行一回あたりのコスト |
① | 約90回 | 18000円 | 200円 |
② | 約100回 | 18000円 | 180円 |
③ | 約200回 | 44000円 | 220円 |
④ | 約50回 | 9000円 | 180円 |
⑤ | 約90回 | 19000円 | 211円 |
⑥ | 約100回 | 24000円 | 240円 |
⑦ | 約75回 | 21000円 | 280円 |
この表から傾向を読み取ると、③のゴアテックスウェダーを除いて、各社独自の防水透湿素材を採用したウェーダーは、概ね100回前後の使用でなんらかの水漏れが発生している、また、ウェーダーの購入時価格によらず、寿命に至るまでの使用回数から導出した1回釣行あたりにかかる費用は、概ね180円〜280円程度であることが解りますね。
上記データの平均値も中央値も概ね220円以下の値になるので、防水透湿ウェーダーに掛かる平均的な1釣行あたりのコストは概ね220円だと考えてよいでしょう。
特に、④の激安ウェーダーでも、②や⑤のような各社ミッドレンジウェーダーから、③⑥のようなハイエンドウェーダーでも、1回釣行にかかるコストはさほど変わらないところは面白いと思います。
最も短命に終わった④の名誉のために付け加えておくと、このウェーダーに使用されているエントラント素材は、各アウトドアメーカー、スポーツメーカー、フィッシングメーカーでも採用されている、東レが世界に誇る防水透湿素材で、メーカー各社はいろいろな独自のネーミングをつけていますが、中身は実はこのエントラントであるというものも多数あるというほど、メジャーな素材です。
防水透湿ウェーダーの寿命調査 まとめ
今回は、使用回数と購入金額から見たウェーダーの寿命とコストについて、実績データをもとにその傾向を分析してみましたが、いかがでしたでしょうか?
今回の調査結果から、タイトルにある1回釣行あたりにかかるウェーダー代はおよそ220円、防水透湿ウェーダーの寿命は約2年半、100回使用程度という傾向が読み取れますね。
もちろんここで提示したデータは、個人の使用状況、地域からくる気象条件や、季節性、使用後のお手入れ、保管状態などの各種条件によって大きく変わってくる可能性が高いため、 必ずしも万人に当てはまる正解というわけではありません。
しかし、複数メーカーのウェーダーでの実績の平均値なので、使用状況や使用条件が似ている方にとっては、ご参考になるのではないかと思います。
おおよそトラブルが発生するタイミングが予想できれば、それに向けてウェーダーを買い替えるための予算を組むことができますしね。
最後に、長年ウェーダーを使用してきて感じることですが、やはり防水透湿素材のウェーダーはお手入れの状況によって寿命も大きく左右されると思います。
使用後は必ず外側を水洗いし、直射日光を避けた逆さ釣りの陰干しによる完全乾燥、そして湿度の低い冷暗所に保管するということを徹底してあげるだけで、可能な限りウェーダーの寿命を延ばしてあげることができますので、ぜひ皆様も丁寧にお手入れしてみてください。
また、ウェーダーを履いたまま地面に座ることはできるだけ避ける、また、しゃがんだ姿勢などをとることで、ウェーダーの縫製部分や生地に過度に張力を掛けるようなことはできるだけ避けるなど、ウェーダーにできるだけ負担を掛けない使い方をすることで、より寿命を延ばすことは可能だと思います。
なお、ウェーダーではピンホールや水漏れといった少々のトラブルであれば、DIYで修理することが基本です。
参考までに、防水透湿ウェーダーの漏水修理方法、および、ソックスウェーダーやネオプレンウェーダーの完璧な補修方法についての記事も以下に書いていますので、よろしければご覧になってみてください。
ということで、今回のお話はこれでおしまい。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
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